ムスリム学びブログ

インドネシア人と結婚したムスリムの日々の学びの記録

映画『天国からの奇跡』の感想

敬虔なクリスチャンの一家に突然訪れた幼い娘の難病という実話に基づいた映画で、信仰について考えさせられる久しぶりに感動した良い一本でした。今回はこの映画の感想を書いてみたいと思います。

 

まずはあらすじから。

テキサスに住むビーム一家は敬虔なクリスチャンのごく一般的な家庭。娘のアナがある日突然、原因不明の病に倒れる。母親のクリスティはアナの看病に奔走するも、治癒する見込みがなく、信仰が揺らいでいく。ボストンにその専門の権威の医師がいるものの、予約が9ヵ月先まで埋まっていて、誰かが亡くなるのを待つしかないという残酷な状況だった。クリスティはいてもたってもいられず、アナを連れてボストンの名医のいる病院に乗り込み、何とか診察をしてくれるよう受付の女性に涙ながらに訴える。空きが出たら連絡すると言われ、親子は病院を後にする。街のレストランで知り合った元気で快活な女性アンジェラと出会い、翌日親子はボストンの街を案内してもらうことに。その途中で病院から診察に空きが出たとの連絡を受け、早速医師に診てもらう。ヌルコ医師は子供の気持ちを大事にしてくれる温かさを感じさせる医師だった。広範囲に検査をするが、治療法はないとのこと。ただ、生活を今より楽にする方法はあるという。アナの父親のケビンは動物病院を開業したばかりで、多額の借金があった。そのうえボストンの病院での治療費がかさみ、クリスティは経済的にも苦しめられて信仰心が揺らぎ、教会にも行かなくなる。アナの治療が思うように進まず、アナも痛みによるストレスから母親にあたるようになり、母子ともに精神的に限界な状況に追い込まれていく。そんな折、ケビンが家族を連れてアナの病室にサプライズでなだれ込んできて一家の絆は深まる。しかし、アナの症状はひどくなるばかりだった。ヌルコ医師に、家族と過ごすのが一番の薬になると言われ、アナはテキサスに戻る。ある日、姉のアビーに誘われて木に登ったところ、アナは木の穴の中に落ち込んでしまう。絶望的になりながらも母クリスティは悔い改めて神に祈り続ける。大規模な救出劇の末、アナが助け出された時には息があった。運ばれた病院の医師は骨折もなく、軽い脳震盪だけだったと驚きながら伝える。家に戻ってからアナは日に日に元気になっていった。なんと病気が治っていたのだ。アナは木の幹の中に落ちたときに「戻ったら治るから」と神様に言われたと両親に告げる。

 

以下は感想です。

父親のケビンはどんな状況に置かれても神の存在を否定することなく、副業も考えるなど自分にできる限りのことをしていました。イスラムでもこの姿勢が望ましいので、宗教は違いますが、こうありたいと思わせてくれた人物です。ケビンの強い信仰心は一家の柱としての役割を十分に果たしていると思います。アナはそんな父親の影響を受けたからこそ、ボストンの病室で一緒だった少女に「神様が一緒にいるよ」と励まし、お守りの十字架を贈ることができたのでしょう。その行動が少女に心の平安をもたらしました。

 

母親のクリスティが不治の病に苦しむ娘を抱えて、どうにもならなくてもどかしい気持ち、私にも息子がいるのでよくわかります。アポなしでボストンまで名医を訪ねていったのは、そんなもどかしさが膨れ上がって爆発し、藁をもつかむ思いが起こした行動と思うかもしれませんが、私はクリスティも母としてできる限りのことをしたのだと思います。家でじっと待っていても予約に空きが出るのがいつになるか分からない。実際に行動に出たからこそ、母親の強い思いが病院の受付の人の心を動かし、結果的にヌルコ医師の診察を受けることができました。アンジェラという親切な女性にも出会うことができました。父ケビンが家族を連れてボストンのアナに会いに行くために、ダメ元で空港の職員に差し止めになったクレジットカードを何枚も試していました。このことも空港の職員の心を動かしました。行動してみることは本当に大切だと感じます。

 

最後の教会でのスピーチで、クリスティは「奇跡とは優しさ」と言っていましたが、私は全部アッラーがもたらしたものだと思います。もしボストンの病院の受付の人が優しい人でなかったとしたら、アンジェラがあのレストランで非番の日だったら、空港の職員がものすごく事務的な人だったら、ボストンの医師がヌルコ医師のような温かみのある人でなく、権威やお金にしか興味のない人だったらどうでしょうか。これがすべて偶然とか人の優しさによるものと言い切れるでしょうか。すべてアッラーが用意してくれたものにほかなりません。アナが木の穴に落ちた時に、クリスティは悔い改めて一心に神に祈っていました。アッラーがその懺悔を受け入れてくれたのかもしれません。この話は実話ですが、アナは木の中で自分が身体の外に出たこと、神様と話をしたことを明かしています。アナは「戻りなさい、戻ったら治るから」と言われたそうです。その後、病気は見事に治りました。これは医学でも人の優しさでも説明がつきません。人間が起こすことのできない奇跡。それはアッラーが起こしたものです。

 

信仰が揺らいでいるクリスティに対して教会の神父が「人生で最も苦しかった頃に、必死で神に縋ることと、神に背を向けることの両方を私は試した。そして私はすべて信じる方を選んだ」と話していましたが、「信じる」ことが重要であり、「信じる」からこそアッラーは応えてくれるのだと思います。ボストンの病室で一緒だった少女は残念ながら死んでしまいましたが、たとえ死んだとしてもそれがアッラーのご意思なのです。一見残酷と思われることでも、私達の小さな頭では理解できないことでも、アッラーのすることに意味のないことはひとつもありません。その少女もアナと話してから亡くなるまでの日々を心安らかに過ごしていたといいます。

 

この映画は私達が信仰心を強く持ち、自分にできる範囲のことをただ一生懸命する。そしてあとはアッラーにすべて委ねる。それを教えてくれている映画だと思います。私も何が起きても信仰心を強く持ち続けることができますように。お読みくださりありがとうございました。